脳・脊髄の治療と脳ドック

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脳梗塞の治療

脳梗塞は、病型に応じて適切な治療を行うことが重要ですが、最も大切なことは、「発症すれば一刻も早く治療を開始すること」です。いったん脳の血管が詰まると、時間とともに脳の組織は梗塞に陥っていき、ついには元に戻らない状態となってしまいます。ですから、脳が梗塞に陥ってしまう前に、詰まっている血管をできるだけ早く再開通させ、脳の血流を取り戻すことができれば、脳梗塞の範囲は最小限で済み、症状も回復する可能性があります。

しかし、ひとたび脳梗塞に陥ってしまえば、その後に血流を取り戻しても「時すでに遅し」であり、梗塞に陥った脳組織が元に戻ることはなく、大きな後遺症が残ってしまいます。脳の血流を取り戻す急性期治療には以下の方法があります。

1)rt-PA静注治療

2005年10月から我が国でも実施可能となった血栓溶解治療です。rt-PA(アルテプラーゼ)という薬を点滴で投与することにより血栓を溶かし、詰まっている血管を再開通させることができます。現在すでに我が国で5万人を超える方が本治療を受けていますが、使用成績調査ではrt-PAを使用した3人に1人の方が障害のない状態まで改善されています。当院でも本治療を行っており、全国でも有数の実績をあげています。

これまでrt-PA静注治療は発症してから3時間以内に開始しなければならないという制限がありましたが、2012年9月から4.5時間以内まで制限時間が延長され、より多くの方がこの治療を受けられるようになっています。

2)血管内治療

血管の中に通した細いカテーテルを用いて治療する「血管内治療」によって、詰まっている血管を再開通せる方法は我が国でもrt-PA導入前から行われていましたが、近年新しい器具が続々と導入されこの分野は目覚ましい発展をみせています。

rt-PA静注治療が本邦でも承認され、その恩恵を受けられる患者さんは確実に増えましたが、それでも残念ながらrt-PA静注治療を受けても効果がなく重い後遺症が残る方、またrt-PAの使用には発症からの時間など様々な制限があるため、rt-PAを投与することすらできない方も多くおられます。2015年以降、複数の研究でrt-PA単独療法よりも血管内から血栓を取り除く血栓回収術を併用した方が、病気の進行が改善できることが証明され国際的に標準治療となっています。血栓を絡め取るステント型のデバイスや血栓を吸引除去するカテーテル及びその併用により、近年では9割程度の再開通率が報告されています。

「脳血管内治療センター」を開設し、365日24時間体制で脳卒中の患者さん(くも膜下出血・脳梗塞・脳内出血など)を受け入れています。血管の中から詰まっている血管を再開通させるために使用する器具は以下のうち、血栓がある場所や大きさなどから最適と考えられるものを選択します。(複数を併用することもあります。)
血管内治療


血栓回収術

  • 右中大脳動脈閉塞(矢印)

  • 回収された血栓

  • 完全再開通が得られた

これらのrt-PA静注治療や血管内治療の発達により以前では救えなかった重症の脳梗塞患者さんが歩いて家に帰ることも可能となっています。ただし、これらの治療は出血による合併症などのリスクも伴いますので、専門の医師により適応やタイミングを慎重に見極めることが重要です。

これらの血行再建治療が行われなかった場合でも脳梗塞の病型に応じて適切な治療を行っていきます。早期からリハビリテーションを積極的に行い、後遺障害の低減に努めます。また脳梗塞の再発や全身血管病の発症を予防するために、何が重要かを評価し治療していきます。当院での急性期治療が終われば、自宅に退院するか、回復期のリハビリテーション治療などを継続するかを医療ソーシャルワーカーらとの相談を通じて決定します。

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